ずっとずっと思っていた。だけど思いは届かなくて、ただ見つめるだけだった。振り向いてほしくて、話しかけて欲しくてからかったりもした。大人気ないと思っていたけれど、それでも自分の中にくすぶる思いには勝てなくて、嫌がるかもしれないと思いながら。
彼に彼女がいると知った時、何とも言えない衝撃だった。悲しいという感情ではなく、ただ茫然としてしまった。彼に彼女がいるなんて知らなかったから。いや、そうではない。彼に彼女がいる事を知りたくなかったという方が正しいのかもしれない。彼が婚約するというまでそう時間はかからなかった。彼が婚約すると言いだして半年して彼は実家に彼女を連れて帰り、彼女にプロポーズをしたらしい。プロポーズの内容は彼に聞いたが恥ずかしいのがあり話そうとしなかった。
それから彼女はこちらに引っ越してきて近くの職場を探し就職した。もちろん彼と同居で。彼と彼女の関係は順調に見えたが、突然、破局を迎えた。言い出したのは彼女の方だったらしい。彼女は今の生活が重荷だったらしい。しかし、彼が嫌いになったわけでもなく彼女自身も何故一緒にいる事がつらいと感じたのかがわからないようだったと彼は話していた。もうすぐ結婚まで数えるほどまで来ていた分彼のショックは大きかったようだった。なにせ婚約解消なのだから。彼は婚約解消してから自分自身を落ち着かせるように、「結婚前で良かったのかな。」とよくつぶやいていた。そういう彼に対して「そうだね。」としか私も言えなかったが。
いきなり一人身になった彼。自分を好きになってもらうチャンスはあったけれども、それを伝える事は出来なかった。好きになってもらいたいという気持ちは強くあった。でもそれ以前に今の関係が壊れてほしくないというのが何よりも強かった。私は結局のところ友達と関係を最優先にして彼女という土台に上がろうとはしなかった。好きだったけれどもそこまでの想いしかなかったと言えばそれまでだった。
彼女の関係よりも友人としての付き合いを選んだ私は弱かったのだろうか?だけども、もし、彼にたった一言思いを告げたら何か変わっただろうか?それは良い方向にも悪い方向にも。
良い方向に変わったのならきっと私は幸せな日々を過ごしていただろう。悪い方向に変わった場合は、告げた事を深く後悔しただろう。そして何も告げようとしなかった私は一番臆病で卑怯だったのかもしれない。
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